Sony Music Foundation
アジアツアー2004   50th Anniversary   2004年来日公演メンバー紹介
Arts Leadership Programs   アメリカ吹奏楽事情   イーストマンに聞きたい!言いたい!   TOP
Eastman Wind Ensemble 50th Anniversary

ガラ・コンサート終了直後に勢揃いしたEWEの指揮者たち 左からフェネル、ハンスバーガー、スキャッタデイ、ローラー
2002年2月5日〜2月9日の期間、イーストマン音楽学校にてEastman Wind Ensemble 50th Anniversaryと題されたカンファレンスが開催された。コンサートはもちろん、数々の著名人によるレクチャー、公開リハーサル、卒業生と現役EWEとのジョイント・コンサート等、その内容は盛りだくさん。このページではカンファレンスに参加したSony Music Foundationのスタッフが見てきたままをレポートする。

カンファレンスはイーストマン音楽学校内に併設されたイーストマン・シアター(3,000人をも収容する大ホール)と、キルボーン・ホール(400人収容の室内楽ホール)を主な会場とし、世界各国の吹奏楽関係者、音楽ジャーナリスト、教師や奏者たちが多数参加していた。日本からもイーストマンの卒業生である秋山紀夫氏が参加し、世界各国の吹奏楽レパートリーについて議論するディスカッションのパネリストとして、日本の状況を話していた。

このカンファレンスの直前にプレス発表されたEWEの次世代指揮者マーク・スキャッタデイが注目の的となっており、フレデリック・フェネル、A. クライド・ローラーといった重鎮、そしてカンファレンス開催に最も貢献したドナルド・ハンスバーガーといった、吹奏楽界のスターが勢揃い。半世紀を支えた3人はもちろんその存在の大きさと暖かさを醸しだし、新指揮者は興奮の中、控えめではあるがこの重責と今後の自分の役割を理解しているかのように、3人を支えていたのが印象的だっだ。
コンサート:打楽器アンサンブル“ネクサス”  キルボーン・ホール◆2月5日(火)
現代音楽の演奏で定評のある5人組の打楽器グループ、ネクサスによるコンサート。
メンバーのウィリアム・カーンはイーストマンの教授。即興をふんだんに盛り込んだその緊張感溢れる演奏は、ロチェスター入りしたばかりでコンサートにかけつけた筆者に眠るスキを与えない、素晴らしく楽しいものであった。
オープニング・ウェルカム キルボーン・ホール◆2月6日(水)
今回のカンファレンスの中心人物、ハンスバーガーとイーストマン音楽学校学長・ジェームズ・アンダーコフラーによる開会の挨拶。この2人もまた昔はここで一緒に学んだ仲なのだそうだ。


ドナルド・ハンスバーガー氏

学長・ジェームズ・アンダーコフラー氏
打楽器の即興テクニック キルボーン・ホール
ネクサスのメンバーで、イーストマン教授でもあるウィリアム・カーンが自身の演奏と学生を起用して、打楽器の即興演奏テクニックについてのレクチャーを行う。
演奏した学生に意見を求めたり、客席の参加者に印象を聞いたりと、和やかな進行。それにしてもイーストマンの打楽器レベルは相当に高いものがある。
コンサート:ラリー・コムズ(Basset Clarinet)をソリストに迎えて キルボーン・ホール

演奏中のラリー・コムズ 指揮はロバート・ランベロー


ラリー・コムズによるマスタークラス
小編成のEWEと、クラリネット奏者ラリー・コムズ、副指揮者として何度かEWE日本ツアーに同行したロバート・ランベロー指揮によるコンサート。

シカゴ響時代に数々のソロで著名な指揮者と共演してきたコムズの演奏は、何とも優しい音色で満員の聴衆から喝采を浴びていた。この日の演奏曲目はモーツァルト作曲クラリネット協奏曲イ長調K. 622(ランベロー編)。木管を中心とした小編成のEWEも、うまくまとめられ、コムズをサポートしていた。

コムズはこの後クラリネットの学生を対象としたマスタークラスも開催している。
EWEディスカッションと公開リハーサル イーストマン・シアター

リハーサル中のEWE新指揮者マーク・スキャッタデイ 右はネクサスのメンバー
カンファレンスのメイン・イベントとなるガラ・コンサートのためのリハーサルを公開し、レクチャーを交えながら進行されたもの。フル編成のEWEとネクサスによるフーサ作曲“パーカッション・コンチェルト”をモデル演奏し、即興演奏にどのように合わせるか、等のテクニックについてハンスバーガーが語っていた。

ここで筆者が初めて目にしたのはEWEの新指揮者マーク・スキャッタデイが指揮をする姿。とにかく背が高く、そしてとても物腰の柔らかい、人間味溢れる人という印象。その後話す機会があったが、その見た目通りの印象は変わらず、イーストマン音楽学校が何故この人を選択したか、納得いくものだった。
1952-2002 The Wind Ensemble Movement キルボーン・ホール◆2月7日(木)

左からかけつけたばかりのフェネル、ハンスバーガー、ローラーのEWE歴代指揮者たち
予定されていたのはフェネル、ローラー、ハンスバーガーと司会進行役のジェフリー・レンショーによるディスカッション。この日までカンファレンスに参加出来るのかどうかが危ぶまれていたフェネルがこのディスカッションの途中に登場。鳴りやまない拍手で迎えられた。
Gala Eastman Wind Ensemble Anniversary Concert イーストマン・シアター◆2月8日(金)

EWEメンバーをバックに4人の指揮者の記念撮影

このコンサートがカンファレンスのメイン・イベントといった位置づけだろう。EWEの3人の歴代指揮者に加え、新指揮者のスキャッタデイも参加、4人が入れ替わり立ち替わりの登場となった。プログラムは下記に記す。

今回のEWEに参加している留学生 クラリネットの松岡さんとサックスのチサトさん

何よりも嬉しく感じたのは、今回のEWEのメンバーには日本人が3人参加し、日本ツアーに行きたいと口を揃えて言ってくれたこと。そして今回のメンバーで日本ツアーを行えないことが悔やまれる。(次回ツアーは2004年を予定)そのくらい、いつにも増してEWEの演奏がパワフルかつ緻密に聴こえてしまったのは、身内びいきだろうか?

ステージに立つソリスト バリー・シナイダー(ピアノ)

この演奏会の最後を飾ったのはピアノのバリー・シナイダーを迎えてのレイノルズ作曲「Concerto for Piano and Winds」。シナイダーは2002年に浜松で開催されるイーストマン音楽学校夏季セミナーin浜松でピアノ・ソロクラスを教えるために久しぶりに来日するが、彼のペダルへのこだわりが強く感じられ、そのテクニックの素晴らし さに圧倒されてしまった1曲であった。(詳細は雑誌「ショパン 4月号」にてレポートあり)
◇演奏会プログラム◇
Gala Eastman Wind Ensemble Anniversary Concert
M1 Serenade No. 10 in B-flat, op. 370a
Adagio, Allegro
W. A. Mozart
予定ではフェネルが指揮をするはずだったが実際はハンスバーガー指揮をし、ステージ上で椅子に座ったフェネルが見守る形となった
M2 Four Seasons
Spring, Summer, Autumn, Winter
Richard Rodney Bennett
M3 Elsa' s Procession to the Cathedral from Lohengrin Richard Wagner
(arr. Cailliet)
以上2曲 指揮はA.クライド・ローラー
M4 Concerto for Percussion
Maestoso, Moderato molto, Allegro ma non troppo
(ソロ:ネクサス/新指揮者マーク・スキャッタデイ指揮)
Karel Husa
<<休憩>>
2部はすべてハンスバーガー指揮
M5 Unending Lighting(世界初演) Bernard Rands
M6 Concerto for Piano and Winds
Dramatic and Lyric, Capriccio, Patterns and Variations
(ピアノソロ:バリー・シナイダー)
Verne Reynolds
卒業生も参加した特別大編成イーストマン・ウインド・アンサンブル◆2月9日(土)

なごやかな雰囲気で進行している卒業生も混じった特別大編成のEWE
この日は昨日とはまた少し違ったリラックスした雰囲気による演奏。今回のカンファレンスのひとつの目的として卒業生と在校生との交流があげられる。

この日のステージは、昨夜熱演したEWEの現役メンバーと、卒業生がその中に混ざって歴代の指揮者によって行われた。進行の途中、卒業生全員がひとりずつ自己紹介をした。それぞれが自分の中での思い出としてのEWEを語り、指揮者への感謝の言葉、初めての日本ツアーに行った時のこと、フェネルに教えられたこと、家族的な雰囲気の中、進められた。

それぞれの言葉に敬意を持ちながら聞き入る在校生、いかに自分がここイーストマンで学んだかを真剣に語る卒業生、そしてその全員がハンスバーガー、ローラー、フェネルのもと迫力ある演奏を行い、このプログラムの最後はフェネル指揮による「星条旗よ永遠なれ」で閉められた。

また、今はもう引退しているが、初代指揮者の時代からEWEを陰で支えたステージ・マネージャー、メリット・トーレイJr.がここでハンスバーガーから紹介され、会場の全員から盛大な拍手を受けた。彼は何度も日本ツアーにも来ており、「ジュニア」の愛称で親しまれていた。あひるのような歩き方でいつもメンバーやツアー・スタッフを和ませてくれた事を筆者もよく覚えている。最後の演奏曲「星条旗よ永遠なれ」では、ジュニアはEWEの一員としてトライアングルを嬉しそうに演奏していた。楽譜の指示とは違うところでその音が鳴ったところで、それもこれもすべてご愛敬。

とにかくこの50周年を祝うイベントは、集まる事の出来る人は集まって、演奏出来る人はみんな演奏して、50年を懐かしんで、そして新たな50年をまた迎えようという節目であったと同時に、イーストマン音楽学校の世代を超えた人間同士の交流を大切にし、みんなで音楽を愛していこうという姿勢が伝わってきたものであった。