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イーストマン音楽学校 Arts Leadership Programs
イーストマン音楽学校Arts Leadership Programs(ALP)全米1の大学院にも選ばれた学校の、ユニークなカリキュラムを紹介します

インタビューに答えるスーザン・ロバートソン氏
アート・マネージメントという言葉が最近日本の教育界、音楽界ではよく取り上げられており、音楽大学の一部では専門コースを設けたり、コースまではいかなくても講座として多くの学校でこの分野を学生たちに紹介するという事が盛んになってきていると聞く。

イーストマン音楽学校だけがアメリカにおいてアート・マネージメントを行っているわけではないが、アメリカ国内でもここイーストマンのカリキュラムを参考にする学校が多いらしく、今回の訪問で広報副部長スーザン・ロバートソン氏にその内容を詳しく聞いてきた。このページではインタビュー形式で行われたやりとりを詳細に紹介する。ALPに限らず、イーストマンとはどんな学校なのかがよくわかる内容なので、要チェック!
Qまずはアメリカの学校の表記について。コンサバトリーと音楽学校の違いはあるのですか?
A違いがあると私たちは思っています。音楽学校ではコンサバトリーで提供される音楽教育よりも幅広い範囲で教育を提供しています。私たちは生徒が演奏家としてだけではなく、良い学者、良い芸術のリーダーとして成長することを望んでいます。生徒たちが演奏上の哲学、そして表現方法をふまえた上での音楽家となるためのカリキュラムを提供しているのです。

もちろん、演奏家としても最も高いスタンダードを保持しようとしています。ですからイーストマンに入るためには、その他のコンサバトリーに入ることと同じくらいの演奏レベルも必要となります。
QUSニューズ&ワールドレポートで1位になったその評価の理由は何でしょう?
A

学校のメインエントランスから左をみたところ
私が思うに、学校がとても広範囲にわたるレベルの高い教育を行っているからではないでしょうか?それが1位と評価された理由だと思います。
Q学生が学校に望んでいることは何だと思いますか?
A 演奏分野での最高レベルの教育、そしてさきほど言ったように多くの生徒はもっと広範囲に渡る教育を望んでいると思います。そのように様々な考え方を知るという教育は、純粋な知識としてとても価値あるものです。そしてもちろん、卒業後キャリアを築く上でこの上なく有益な事です。
Q学生からの学校に対する意見を何らかの方法で吸い上げたりしているのですか?
A ディーン(学部長)が行っている調査があり、それは毎年行われています。今年はインタビュー形式でしたが、去年まではアンケートを取っていました。生徒からの情報というのは、常に得るように努力しています。
Qイーストマンの図書館は全米でも有数の素晴らしい存在だそうですね?
A

シブリー図書館の入り口
イーストマンでのシブリー音楽図書館の存在の有意義さは、いくつもの調査で有益なことのトップに挙げられます。この図書館は全米でも他に例をみないほど、たくさんの資料を取りそろえています。そして常に音楽図書館として最高の評価を得ています。イーストマンでの学士課程を修了した生徒が他の学校に行くと、必ずといって良いほどこの図書館を懐かしむようになります。図書館にないものはほとんどなく、美しく、静かでとても良い環境です。
Q浜松のセミナーで奨学金を与えていますが、それ以外にも学校にはたくさんの奨学金の種類があると聞いていますが?
A もちろんです。すべての生徒は奨学金の対象となります。ですから浜松では受講するすべての人たちに、もし浜松では奨学金を得られなくても、願書を提出して入試を受けるように奨励していました。また、生徒が給料をもらいながら教授の仕事を手伝ったり、学校内の様々な機関で働く事なども出来ます。ですから、奨学金、ローン、学校内の機関での仕事など、それらを組み合わせたものが多くの生徒にとって有益な経済的援助となっています。TA(ティーチング・アシスタント)と呼ばれる制度もあり、これは大学院生に与えられる権利です。その良い点は、アカデミックな環境の中で専門の先生と一緒に働く機会が得られることです。教授の助手をする事によって、自分自身も優れた教師となるべく、様々なことを学んでいるのです。お金をもらいながら学ぶという絶好の機会です。
Qカリキュラムについてお聞きします。他の音楽学校と違って特徴あるカリキュラムはありますか?
A Arts Leadership Programs(ALP)が最も特徴あるプログラムだと思います。他の学校でも類似したようなクラスを持っているところはありますが、私たちの持つカリキュラムほど総括的ではありません。
Q楽器のレッスンは週に1回ですか?
A 通常はそうです。それがスタンダードです。それに加えて、毎週スタジオクラスというものが1回あります。その先生に師事している生徒が全員集まり、そこで演奏し合い、意見を交換し合う事です。また、先生が演奏し、その演奏について学生たちが意見を述べるといったこともあるようです。自分のレッスンもそうだし、伴奏者のレッスンなどにも行ったりするので、実質のレッスンは週に1回以上だとも言えます。
Q在校生の数は?
A 大学院など全部合わせて800人ぐらいです。これは理想的な数字です。数年前まではもっと多かったのですが、このくらいの規模の方が様々なアンサンブルなどを組む際に適しています。
Q入試の際はテープでのオーディションも可能なんですね?
Aそうです。外国在住の方やアメリカでも遠方に暮らす人のために、テープでのオーディションも可能にしています。しかしながら、私たちはなるべく実際に学校に来て入試を受けるよう薦めています。実技の他に、聴音の試験や面接なども行われますが、面接もやはり生徒を選ぶ際の重要なポイントとなります。学校の雰囲気を実際に目で見て、感じていただきたいと思っています。場合によっては教授陣、スタッフ、アドミッション・ディレクターが全米や世界各地を回ってカンファレンスや生徒の誘致活動に赴く事もありますが、やはり最終的な決断に際しては実際に学校に来て、在校生や教授陣、学校のスタッフとよく話をしてから決める方がいいと考えています。
Qお揃いの洋服を着た学生が入試に来る人たちの世話をしていましたね?
A 彼らはオリエンテーション・コミッティーと呼ばれています。新入生を受け入れるための準備をするスタッフです。自分たちで志願してこのスタッフを引き受けています。このコミッティーは多くの労力を新入生歓迎に費やします。ダンスパーティーを企画したり、遠足でナイアガラの滝に彼らを案内したり、様々なイベントを企画しています。大学院生の入学の場合は、オリエンテーションの後に飲み会があります。
Q日本とはとても違う点ですね。アメリカのお国柄なのでしょうか?
A 多分、これがアメリカのカルチャーでしょうね。他の学校でも行われていると思いますが、これもひとつのイーストマンの伝統です。生徒たちはとにかく入試といえども楽しい経験となるよう、色んな工夫をします。エレベーターの中でジャズの演奏をしたり、ユダヤ教の舞踊音楽でカリズマという楽しい音楽があるのですが、そういう音楽を学生が提供しています。
QArts Leadership Programs(ALP)の話を聞かせて下さい。去年のアメリカンセンターでの講義はとても興味深いものがありました。他にもいくつかのトピックがあると思いますが代表的な授業内容を教えて下さい。
A

ALPの授業風景
多種多様なトピックを扱っています。例えば音楽家のための法律、著作権、コンサートが成功するためのプログラミング、広報活動と宣伝活動、音楽家のための肉体的健康保持などがあります。このALPは学部の1年生からでも履修は出来ますが通常は他の授業で忙しすぎるので大体3年生以上、そして大学院生からの生徒が多く履修し、またそういう人たちを対象として考えられています。

今年は200人の生徒がALPに参加しており、これはとても多い数です。全生徒の4分の1となります。1学期に約10ほどある様々なクラスから自分が興味のあるトピックを選択しています。
Q卒業生の就職率がとても高いと聞いています。就職相談などを専門とする窓口などもあるのですか?
A キャリア・プランニング・アンド・プレイスメントという専門の窓口があります。そこは、生徒が希望する職種に就けるよう手助けをすることを目的としています。基本的には1対1で個人的な相談を受けます。場合によってはクラス形式のものにありますが、卒業間近で就職活動をしている場合は1対1で相談を受け、アドバイスを与えるという事が基本です。
Q1対たくさんではなく、1対1がたくさんあるわけですね?
A そうですね。特にイーストマンではそういう機会が多いと思います。何故なら教授陣の多くがロチェスターに住みフルタイムで仕事をしています。ここでは教授と一緒にお茶を飲んだり、リサ イタルに一緒に行ったり、教授との接触が多く持てるのです。学校では特にこういう環境が必要ですし、コンサートを開く演奏家にも聴衆に対してこういう啓蒙するような気持ちが必要でしょうね。学校でそのような気持ちを学び、ステージや仕事に反映させてほしいと思っています。
Q日本でもアート・マネージメントという科目が出来始めています。日本の人たちから話を聞くと、学校と企業があまりつながりを持っていないように思います。イーストマンではそういう実際の卒業後の進路となり得る企業などとのつながり、付き合いをどうしているのですか?
A 私たちがやることはいくつかあります。ひとつには、とても良いインターンシップ・プログラムというものがあります。世界中に私たちがコネクションを持っている企業や団体があり、ALPを履修した学生はそこでインターンとして働く機会が与えられます。中にはそのままそこに就職し、フルタイムの仕事を得るという事もあります。オペラハウス、多くのオーケストラ、ラジオ局などでそのようなインターンを行っています。地元のロチェスター・フィルとのパートナーシップも結んでいるので、今は弦楽器奏者だけですが、特定された数の演奏会でオーケストラのメンバーとして演奏する機会が与えられます。その演奏に対しては給料も支払われます。これもまた学びながら働くことの出来るという良い機会であり、全く同じ職業に就くための良いトレーニングにもなります。
Qインターンシップという制度は日本ではまだまだ多くは行われていないようです。
アメリカでは職業訓練としてずいぶん前から盛んに行われているのですね?
A そうですね。アメリカではインターンシップはとても頻繁に行われています。一般の企業や新聞社など。ですが他の音楽学校でこのようなインターンシップに積極的に取り組んでいるかどうかは定かではありません。

生徒がTA(ティーチング・アシスタント:自分がついている先生の助手として、時には先生に代わってレッスンを受け持つこともある)として働く事もある種のインターンシップです。お医者さんの卵が医者になる前に病院で勤務するように。ただ、医者と違うのは、私たちのそれは必修ではなく、あくまでも生徒の選択によるものだという事です。
Q学校が常に新しいインターンシップ先を探すための努力もしているのですか?
A もちろんです。これまでのインターンシップ先との関係を持続すると同時に、常に新しい場所も探しています。例えば私のオフィス(広報部)にもインターンがいて、プレスリリースの作成など、様々なことを学んでいます。そして給料も得ています。
QALPの授業での、ゲスト・スピーカーにはどんな人がいますか?
A サミュエル・アドラー(作曲家)、ジョセフ・ホロヴィッツ(NYタイムズ評論家)、クリーヴランド管やシカゴ響の理事長などの著名な人々をはじめ、他には企業の経営者、アメリカ室内楽協会の教育長、ホワイトハウスの文化広報担当官などがいます。ロン・カーター(ベース)はイーストマンの卒業生で、ここでマスタークラスとALPの講義もしました。そのときはたしか質疑応答形式だったと思います。
Q常に各界の第一線で活躍する人を呼んでその人の声を実際に学生に聞かせるようにしているのですね?
A 卒業と同時に活躍をはじめた生徒たちにも教壇に立ってもらう事もあります。みんな常に学生たちに価値あるアドバイスを与えてくれています。
Q最後に、地域の人たちとの関わり合いについて聞かせて下さい。具体的にどのような事をやっているのですか?
A 市内の公立校との関係がまず挙げられます。私たちのコミュニティー・ディビジョンでは、学費を支払えないような環境にいる子供達に奨学金を与えます。市内の教師達のためのプログラムもあります。そして、ロチェスター・フィルとは密接な関係を持っています。これらはとてもたくさんあります。ロチェスター・フィルの多くのメンバーはイーストマンの卒業生であり、アンダーコフラー学長はロチェスター・フィルの運営委員の一員でもあります。そしてオーケストラ・スタディーと呼ばれるプログラムでは、先程言ったように実際に演奏する機会もあります。

市内の病院で生徒が演奏活動をする場合もあります。地元ラジオ局、美術館とのコラボレーションも持っています。
(インタビュー:2002年2月イーストマン音楽学校にて)