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イベントレポート

2018年03月23日

<10代のためのプレミアム・コンサート>シリーズ 聴く・観る・歌う「ウエスト・サイド・ストーリー」スペシャル体験プログラム レポートアップ!

2018年3月、レナード・バーンスタインの愛弟子で、世界を代表する指揮者のひとりであるパーヴォ・ヤルヴィさんと、パーヴォさんが首席指揮者を務めるNHK交響楽団が、バーンスタイン生誕100周年を記念して彼の代表作である『ウエスト・サイド・ストーリー』の全曲を演奏会形式で上演し、大きな話題を呼びました。この公演に先立ち、公益財団法人ソニー音楽財団では10代を対象に『ウエスト・サイド・ストーリー』についての理解を深めるためのワークショップ(講師:柴山秀明、ピアノ伴奏:三平順子)を、3月1日に開催。また、その参加者は、翌3月2日に特別公開されたリハーサルも観覧しました。ここではたくさんの子どもたちが参加したワークショップの模様をお伝えします。

文:油納将志 / 写真:上野隆文(一番下の講師写真除く)

 

公演の3日前に会場のBunkamura オーチャードホール内のスペースで行われたワークショップ。会場には、音楽家を目指したり、音楽に興味を抱いている、青少年から小学校低学年まで約70名の参加者が集まりました。『ウエスト・サイド・ストーリー』のストーリーやミュージカルの成り立ちなどを紹介する講師として登場したのは、オペラ役者の柴山秀明さん。柴山さんはコンサートでは白人グループ「ジェット団」のメンバー、A-ラブとして出演。その役柄さながらの明るくユーモアのあるトークですぐに参加者たちの心をつかみ、『ウエスト・サイド・ストーリー』の魅力あふれる世界に連れていってくれました。

前半は、テンポよく、時に笑わせながら、『ウエスト・サイド・ストーリー』や作曲したバーンスタインについてじっくりと説明をしていた柴山さん。すると突然、サプライズがあることを発表しました。なんと指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさんとA‐ガール役のアビゲイル・サントス・ヴィラロボスさんがワークショップにゲストとして登場してくれるとのことで、参加者は大盛り上がり。登場する前に柴山さんがA‐ガールが劇中で歌う「Somewhere」の日本語訳を伴奏付きで伝え、終えるタイミングで、パーヴォさんとアビゲイルさんが姿を現しました。大きな拍手に迎えられたパーヴォさんは「みなさん、こんばんは。お目にかかれてうれしく思っています。この『ウエスト・サイド・ストーリー』はラヴ・ストーリーです。」と挨拶。

「わたしにとっては20世紀の中頃に書かれた作品の中では最も美しいもののひとつだと思っています。今、リハーサルをしてきたのですが、この曲はとてもよく知っているのでおさらいする必要はないのかなと思っていました。というのも、本当に小さい頃から聴いて育ったからです。『America』や『Somewhere』という曲は色々なところで耳にしますので、わたしを育ててくれた曲だと思っています。みなさんにとってそういう曲はありますか?」とパーヴォさんが問いかけると、「『Tonight』です」という答えがあがりました。続けてパーヴォさんは語りかけます。

「わたしが10代、20代前半の頃、この曲を作ったレナード・バーンスタインに師事していました。そのときに勉強したのは彼の作品ではなくて、ブラームスやショスタコーヴィチたちの作品だったのですが、でも鮮明に印象に残っているのは彼の存在感です。彼のリズム感のある独特の指揮は今も懐かしく思い出されますね。今回『ウエスト・サイド・ストーリー』を指揮するわけですが、まぶたを閉じると彼の姿がよみがえりますので、ちょっと彼の物真似もしてみようかなと考えています(笑)」

またパーヴォさんは、参加者たちに『ウエスト・サイド・ストーリー』の要素のひとつであるジャズの魅力も伝えてくれました。

「この曲がとてもおもしろいのはジャズに近いところ。本当の演奏では違うのですが、感覚がジャズっぽいということで多くの人たちが身近に感じて人気が出たのです。当時、オーケストラが伴奏したのではなく、バンドが演奏していました。ですので、サックスやトランペットがあったり、エレキ・ギターにベース、ドラムセットによる演奏で、見た目は非常にポップスに近い。みなさんも機会があれば、50年代や60年代に流行っていた音楽、ジャズもそうですが、ビッグ・バンド編成の音楽を聴いてみたら楽しいと思います。また、ジャズの音楽家たちはスウィングという言葉をよく使います。このスウィングという感覚は楽譜には書き込めない、音と音の間を感じ取るしかないもので、理解したいのならばジャズをぜひ聴いてみてください」

 

そして、パーヴォさんの話を一言一句逃さないように真剣な面持ちで聞く参加者たちから質問の手が上がりました。

「指揮をしている時はすべての楽器を見ていると思いますが、どうしたらそんなふうにすべてを見ることができるんでしょうか?」という問いに対して、「とてもいい質問ですね。これは宿題を解いていくようなもので、曲がどうやってできているのかを楽譜を一節一節よく見て、どうやって組み合わさって音楽として成立しているかを分析します。曲の全体がよくわかるようになったら、細かいところも自ずと理解できるようになっていく。曲のことを知れば知るほど、色んな音が聴こえてくるはずです。指揮者はそうやってみんなの音を把握しているんですよ」と丁寧に返答してくれました。

また「指揮はどれくらい練習すればいいのでしょうか?」という質問には、「そうですね、まずは普通に学校に通うことです。続いて音楽学校に進学するのならば、まずは楽器を演奏するか、歌うことを学びましょう。卒業したら、ようやく指揮の勉強が始まります。だいたい4~6年くらいでしょうか。長い時間がかかります。指揮者になるためには、まず音楽家にならなければなりません。音楽家になって初めて指揮者になれるんです。一歩一歩進んでいくステップがあるんですね。それから色々な曲の楽譜を読み込んでいき、分析するという指揮者特有の勉強、練習が始まっていきます。そうしていると、ある時誰かから、じゃあこのオーケストラ、この合唱を指揮してみるかい? という声がかかるようになるかもしれません。ですので、指揮者を目指してから10年から15年くらいかかるでしょうか」とアドバイス。

そしてその後には、アビゲイルさんが素晴らしい歌声で「Somewhere」を歌ってくださいました。劇中のワンシーンがその場で再現されるような抑揚のある歌唱を格式あるオーチャードホールのステージよりもぐっと近く、歌っている時の表情も発声もうかがい知ることができるような距離感で、参加者たちは夢見心地のように聴き入っていました。

世界の大舞台に立つマエストロから直接教えを受け、さらにアビゲイルさんの生歌を間近で聴けた貴重な体験は、音楽を志す参加者のみなさんにとって大きな糧となったことでしょう。

登場したときよりも、さらに大きな拍手でふたりを見送った後は、柴山さんによる体験コーナーがスタート。まずは参加者全員で「America」を合唱しました。最初は遠慮がちに歌っていましたが、柴山さんの的確な指導でどんどん躍動感が増していき、最後は一体感のある歌声が響き渡りました。

続いては『ウエスト・サイド・ストーリー』のワンシーンにチャレンジ。一人ひとりがセリフを読んでいく前に、そのシーンにどのような背景や感情があるのかを柴山さんが伝えてくれました。堂々としたセリフ回しを聞かせる人、少し元気が足りない人、セリフが持つ感情をうまくつかんだ人。最初は人によってまちまちでしたが、すべての人に柴山さんがコメントやアドバイスしてから2回目が始まると見違えたように統一感が生まれ、まるで演技をしているような生き生きとした表情でセリフを披露。保護者のみなさんも、我が子の早い上達ぶりに目を見張っていました。

柴山さんはワークショップを通して参加者たちに素敵なメッセージを贈ってくれました。「みんなも音楽が流れてくるとワクワクするでしょう?音楽があることによって、楽しさや悲しさ、嬉しさ、愛おしさなどの感情をより強く伝えることができる。音楽にはそんな力があると思います。今日は、『ウエスト・サイド・ストーリー』という作品を通して、そんな音楽の力をみんなに伝えてきましたが、この作品自体が何を伝えたいのか、ということは、みんなが実際に観て聞いて感じてほしいと思っています。マリアとトニーの仲の良いのがとっても素敵、と思ったり、人と人との争いを見て、これはよくないなと思ったり。みんなの自分の感性で、作品の中に表現されているものをリアルに感じ取れるようになってほしいと思います。そのためには、たくさんの『体験』をしてください。セリフを言ってみる、歌を歌ってみる…。体験をすると、友達や知り合いに、リアルに伝えることができます。また、経験をしたからこそ新しく見えてくるものもあります。失敗を恐れずに恥ずかしがらずに挑戦してみてください。そして、その挑戦を通して、ミュージカルをちょっとでもいいなと思ってもらえたら、とても嬉しいです。」

終了後、参加者に感想を聞くと、「普段は習い事で音楽をやっていますが、今日の体験を今後につなげていきたい。パーヴォさんが言われたように、色んな音楽を聴いていきたいと思います」、「講師の方々が今日のワークショップの内容に入りやすいようにしてくれたのがうれしかったです。パーヴォさんの指揮の話もとてもためになりました。指揮をする際はこの曲はどんな構成なのか、奏者がどんな音を出すのかをきちんと把握してから臨みたいと思います」という返事が返ってきました。約1時間半のワークショップでしたが、世界と日本で第一線に立つプロフェッショナルからたくさんの経験を得られたのではないでしょうか。

 

今後もソニー音楽財団ではこうした事業を通して、音楽を通じた社会貢献や、次世代を育成していく活動を続けていきます。次回のイベントもどうぞご期待ください。

 

<講師>

柴山 秀明 Hideaki Shibayama(オペラ役者)

国立音楽大学卒業。ミラノで声楽・演劇を学ぶ。「フィガロの結婚」「美女と野獣」「愛の妙薬」「椿姫」「メリー・ウィドウ」「オペラ座の怪人」「ウエスト・サイド・ストーリー」「ライオンキング」等のオペラやミュージカル・演劇に多数出演。近年オペラでは14年日生劇場オペラ「アイナダマール」、16年藤原歌劇団公演「ドン・パスクワーレ」などで好評を得ている。また、「チャーリーとチョコレート工場」「ニューシネマパラダイス」等映画吹替やCM・ラジオドラマへ出演など声と演技を生かし幅広く活躍中。藤原歌劇団団員

 

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