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齋藤秀雄メモリアル基金賞

第2回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

第2回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

2003年7月31日 東京で行われた贈賞式
後列左より小澤征爾、大賀典雄、堤剛
前列左より広上淳一、古川展生の各氏

財団法人ソニー音楽芸術振興会(英文名称:Sony Music Foundation)[理事長:大賀 典雄]は、2002年(平成14年)に、若手チェリスト、指揮者を顕彰すべく「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を創設しました。
この度、選考委員会において審議の結果、顕彰年の前年(1月1日から12月31日まで)に活躍された指揮者として、第2回(2002年度)受賞者を広上 淳一氏(指揮部門)、古川 展生氏(チェロ部門)に決定しました。

受賞者

古川 展生(チェロ)
広上淳一(指揮)

選考委員

<委員長>
大賀 典雄(指揮者・ソニー株式会社名誉会長・財団法人ソニー音楽芸術振興会理事長)

<委員>
小澤征爾 氏(指揮者)
堤 剛 氏(チェリスト)

●楯
●賞金 当該年毎に1人500万円(総額1,000万円)

贈賞の言葉

  • 古川展生氏への贈賞にあたり
    堤 剛

    古川さんは桐朋学園在学中からメキメキと頭角を表し、ソリストとしてだけでなく、室内楽、オーケストラの分野でも抜きん出た才能を示しました。チェロ演奏の面では既に高度なテクニックとつややかな音色に加えて、独自の音楽性を合わせ持ち、魅力にあふれた音楽家に育って行くだろうと皆が期待していました。ハンガリーのリスト音楽院でその腕にますます磨きをかけられ、帰国された時には完成されたチェリストの域に達していられました。

    其の後の活躍振りは本当に目ざましく、又幅広いものです。東京都交響楽団の首席チェリストという重責を果たしながら弦楽四重奏団「アルコ」のメンバーとして室内楽の分野でも本格的な活動を始められました。それのみならず数々のオーケストラとのコンチェルト協演、活発なリサイタル、アンサンブル活動には目を見張らせられます。これからのチェロ界を背負っていかれる実力の持ち主であることは多くの方が認める通りです。

    特に昨年は今迄の活動にますます拍車が掛かった感じで、華やかさに内容的な深味が加わったことが顕著です。それはリサイタルのプログラミングにも表れており、とても意欲的かつ創造性にあふれています。又ピアニストを始め共演した他のアーティストも幅広くバラエティーに富んでおり、これは古川さんの音楽家としてのふところの深さ、豊かさの故かと思います。

    これ迄の業績に対してだけでなく、新しい可能性を求め、未知の領域にチャレンジし続けて行かれるであろう方にこの賞を差し上げることが出来、とても嬉しく思います。

  • 広上淳一氏への贈賞にあたり
    小澤征爾

    広上淳一氏は、国内外で高い評価を得ている指揮者です。ヨーロッパで着実にキャリアを重ね、日本でもオーケストラのみならず、オペラ指揮者としても活躍の場を広げています。スウェーデンのノールショピング響や、オランダのリンブルク響の指揮者を務めるなど着実にキャリアを築いています。

    広上氏が、第2回齋藤秀雄メモリアル基金賞にふさわしく、この受賞を期に、ますますの活躍を続けていくことを期待しております。

受賞の言葉

  • 古川 展生(チェロ)

    この度は「第2回齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞することができ、大変光栄に思っております。財団法人ソニー音楽芸術振興会の皆様をはじめ、これまでお世話になってきた多くの皆様にあらためて感謝申し上げます。
    私は高校・大学と桐朋学園で学び、チェロ・アンサンブル・サイトウやサイトウ・キネン・オーケストラ等にも度々参加させていただいております。また、私が敬愛する故・井上頼豊先生をはじめとして、これまで私が師事してきた諸先生方は、齋藤先生から直接教えを受けた「弟子」であったこと、そして1992年の東京国際コンクールで「齋藤秀雄賞」をいただいたことなど、齋藤先生に直接お会いしたことはございませんが、先生が築いてこられた伝統や縁の深い環境の中で勉学に励み、幸いにも演奏する機会に恵まれて来ましたことを、とても感慨深く思っております。
    先日、開館50周年を迎えるホールでのコンサートに出演し、その当時のプログラムを拝見させて頂いた折に、偶然にも齋藤先生のお名前を見つけました。日本のクラシック音楽の礎を築いた世代から50年という重みを感じるとともに、時を経て私が同じ舞台に立っている責任の大きさを再確認した瞬間でした。
    この名誉ある賞をいただきましたことを糧に、齋藤先生の孫弟子としてその信念を貫く姿勢の厳しさと、21世紀の、未来に生きる音楽家としてチェロの新たな可能性を見出すしなやかな発想を抱き、今後とも変わらず音楽道に精進していく所存です。

  • 広上淳一(指揮)

    今回は名誉ある「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞することになり、大変に光栄に思って居ります。思えば齋藤先生を始めとする、日本の音楽界の歴史を作った優れた重鎮の方々が多く輩出された頃の我国の状況は、第二次世界大戦を間に挟み、西洋音楽という、今までふれたこともない壮大な創造物の哲学、塊の暗号を理解し、解読しながら、限りない夢と希望をそこに注ぎ込もうと、敢然と立ち向かった努力と挑戦の日々でした。「さぞ大変だったろう!」と容易に言葉で言えることはできても、現代に生きる私達には、その彼らの真の本質的な理解と、偉大な理念には、到底到達できかねるものがありましょう。その至宝の様な方々が築き、残してくれた財産(教育、人材、施設等)に心から敬意と、感謝の気持ちをもって、微力ながらこの遺産をしっかりと受け継いで次代の若者達に伝えて参りたいと思って居ります。

    今や、我国の西洋音楽界は、他の芸術界同様、多くの逸材が国際的視野に立って世界に照準を合わせ挑戦していく時代に変貌しつつあります。オーケストラ、ソリスト、指揮者、オペラ歌手などの演奏家、演奏団体のレベルは世界的水準に於いても、極めて高い段階にまで発展しています。これからは、小澤先生を始めとする世界を相手に堂々と偉業をなしてきた先達に見習い、私達の世代、そしてもっと若い世代の多くが、世界の舞台で闘うことになるでしょう。

    指揮者として大きな過渡期を迎え、まだまだ、その未熟さを痛感している矢先、この賞は、小生を奮い立たせる、大きな励みと勇気になりました。新たな世界への挑戦の決意をより強固にさせてくれたことを心から感謝しています。そして、我国の音楽界の果てしない発展を強く願っています。

プロフィール

  • 古川 展生(チェロ)

    桐朋学園大学卒業。1992年東京国際音楽コンクールにて斎藤秀雄賞受賞。95年日本音楽コンクール第2位入賞。96年安田生命クオリティオブライフ文化財団の奨学金を得てハンガリーのリスト音楽院に留学。97年ドイツ・マルクノイキルヘン国際コンクールにてディプロマ賞受賞。98年東京都交響楽団首席チェロ奏者に就任。ソリストとしての活躍も目覚ましく、99年にDENONレーベルより初のソロCD〈Cellissimo!〉〈I Love You〉を2枚同時に、現在までに計5枚のアルバムをリリースし、いずれも好調なセールスを記録している。高嶋ちさ子(Vn)、高木綾子(Fl)、加羽沢美濃(Pf)らJ-Classicアーティストのアルバムにも多数参加。日本全国各地において精力的にリサイタル活動を展開する他、東京都交響楽団、京都市交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団などとコンチェルトを協演。ストリング・クヮルテットARCOメンバー。サイトウ・キネン・オーケストラ、宮崎国際室内楽音楽祭などに毎年参加。2002年10月ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を中心とした室内オーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」のソリストとして、ハイドンとドヴォルザークの協奏曲を全国5都市で熱演、絶賛を博す。クラシックのみならず、ジャズ、タンゴ、ポップスのフィールドでも目覚ましい活躍を続ける注目の若手チェリスト。

    2003年6月

  • 広上淳一(指揮)

    1958年東京生まれ。

    79年東京音楽大学指揮科に入学。在学中、第17回民音コンクールに入選、同時に日本指揮者協会奨励賞を受賞。83年同校卒業と同時に名古屋フィルハーモニー交響楽団のアシスタント・コンダクターとして一年間、外山雄三のもとで務めた。84年「第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクール」で優勝。その際、コンクールの審査員のウラディーミル・アシュケナージは感銘を受け、85年に日本で行われたNHK交響楽団とのコンサートに広上を指名した。

    以降ヨーロッパではベルリン・ドイツ響、アムステルダム・コンセルトヘボウ管、イスラエル・フィル、オスロ・フィル、ストックホルム・フィル、ロンドン響、ロイヤル・フィル、フィルハーモニア管等、またアメリカ大陸ではモントリオール響、トロント響、ダラス響、ピッツバーグ響、シンシナティ響、ロス・フィル、アスペン音楽祭等を指揮し、常に高い評価を受けている。

    91-92シーズンからスウェーデンのノールショピング響の首席指揮者を4年間務め、97-98シーズンからイギリスのロイヤル・リヴァプール・フィルの首席客演指揮者を4年間、オランダのリンブルク響(マーストリヒト)の首席指揮者を3年間務めた。

    オペラの分野では、89年シドニー歌劇場で日本人として初めて「仮面舞踏会」を指揮してオペラデビューを飾り、ヨーロッパおよび日本では「マクベス」、「トスカ」、「ラ・ボエーム」、「椿姫」等を指揮し、オペラ指揮者としても活動を広げつつある。

    2003年1月、藤原歌劇団による「椿姫」公演でオペラ指揮者として東京デビュー。続いて3月には韓国公演を行い、何れも成功に導いた。

    日本では、日本フィルハーモニーの正指揮者を2000年まで9年間務め、N響をはじめ日本の主要なオーケストラとも密接な関係を続けている。

    94年渡邉暁雄音楽基金音楽賞を受賞。東京音楽大学教授。

    2003年6月